※読む前に※

 この作品はサークルの勉強会中に「履歴書企画」として書いたものです。
 企画概要>各自「ジャンル」「性別」を割り振り、キャラクターの履歴書を即興で作成。作成後、履歴書をシャッフルして担当となったキャラクターの文章を書く。
 課題を「短文」と設定したため、完成した「小説」には至っていない非常に短い習作です。ご了承下さい。

 ↓作成者に許可を頂いて再録した即興履歴書内容

 氏名:小鳥遊 果乃(たかなし はての) 性別:
 生年月日:1989年 6月9日生(満17歳) 身長・体重:156p 41s
 出身地:北海道旭川市 現住所:神奈川県横浜市
 E-maii(PC):egurikomuyouni-utubesi@yahoo.co.jp E-maii(携帯):hasire-watasi@docomo.ne.jp
 学歴(年齢):
  中学校入学(12)/中学校卒業(15)/高等学校入学(16)
 職歴(年齢):
  なし
 免許・資格(取得年齢):
  英検3級(12)/英検準2級(12)/英検2級(13)/英検準1級(15)
 性格・評価(長所・短所等):
  穏やかで人当たりが良い。ただし、スポーツのことになると豹変。勝利のためには味方をも犠牲にする。バレなければ反則も厭わない。口調が敬体から常体に変わる。
  語学は得意だが、理解科目は不得意
 趣味・特技:
  スポーツ全般・語学
 健康状態・身体的特徴・性癖:
  健:良
  身:白い・長髪・小柄
  性:スポーツになると人格が変わる(多重人格ではない)
 家族構成:
  父・母・兄・姉・弟・アザラシ

 あんまり真面目とは言えない企画の雰囲気がお分かり頂けましたでしょうか?
 上の履歴書に基づいてプロトが書いた短文がこちらです↓
モーメント・モノローグ


「上がれ上がれっ」
 例えば新学期、席替えで隣になったクラスメイト。数ヶ月の大部分を高校の中で過ごす学生が、即ち数ヶ月の大部分を隣で過ごすことになるその人物を少しでも理解しようと思うのは、人間観察を日課にする自分の性分を除くとしても当然のことであると思う。
「すぐカバー!」
 出席番号が離れていたので一学期の間は直接話をしたことも数えるほどしかない。第一の印象は大人しく真面目、その印象は席が隣になっても変わらなかった。文系の科目が得意で、特に英語の発音は教師も舌を巻くほどいい。何のけなしに褒めたことがある。小さく首が傾いで、顔にかかった長い髪の隙間から細く「ありがと」声が漏れた。何故だか常にですますで喋る風変わりな彼女の、年相応な短い礼は普段の流暢な英語の影なく舌足らずに響いた。
「ほら、止まらない! リバウンドしっかり!」
 例えばその珍しい名前ひとつにも意味がある。小鳥遊でタカナシ。鷹が無いから小鳥が遊ぶ。良く言ったものだと思う。小鳥と呼べるほど小柄でもなく遊ぶと言うほど活発でもない彼女は、それでも愛らしい小鳥がそうであるように周りの目を惹きつけた。清潔な籠の中で慎ましやかにさえずる小さな白い鳥――そんな詩的な理解は自分の常の思考にそぐわないもので浮かぶ言葉を脳内でもみ消したことも少なくない。
「戻り早く! ゾーン崩すな!」
 例えば人に対しての理解が崩れるとき、それはほとんどの場合においてほんの些細な出来事がきっかけであると思う。十数ヶ月をともに過ごすクラスメイトが唯一互いを知らない授業時間、性別の壁は即ち体育の壁。世の中には知らないで終えた方がいいこともあると、そんな真実をよそに秋の競技祭は逃れられない学校行事として訪れた。

 もう中身を聞き取れない号令あるいは怒号が遠くで続いている。

 長い髪がなびいて人の間をすり抜けていく。反則すれすれのラフプレーを駆使して前に運ばれるボールは吸い付いたようにその白い手を離れない。褒めるの褒めないのというレベルではないしなやかな身の動きは影で彼女を目に追う男どもに舌を巻かせている。何故だか常にですますで喋る彼女の口から想像もつかない叱咤の声が上がり、普段の流暢な英語よりもなお流暢に狭い館内に響き渡る。
 例えば名前一つにも意味がある。縦横無尽に走り跳ぶその姿は遊ぶ小鳥どころではなく、小鳥を追う鷹よりもさらに勇ましく、小奇麗な籠なんぞ蹴倒して悠然と空を駆ける大鷲をさえ思わせる。むしろ大トラと言ったほうがこの豹変振りにふさわしいかもしれないと、そんな言葉が浮かんで消えた。
 例えばほんの些細な出来事がきっかけで人に対しての理解が音を立てて大きく崩れたとき、何を感じるかはそれぞれだ。それはほとんどの場合失望であり落胆であり幻滅であるのだろうと思う。しかしそのどれにも当てはまりながらそれ以上の高揚の消えない胸を抱えることになる場合というのもまたある。
 例えば彼女の渾身のボールが顔面に当たって目の前に星が飛び今まさに冷たい床に倒れこもうとしている自分が、それでもその一瞬こちらを向いた彼女のたなびく黒髪を活力に満ちた顔を輝くものとして捉えていたとしても、己の心をひっくり返せばそれはごく当然のことであるのだと思うよりも強く確信している。

 猛る声さえ遠くに消えるを惜しむこの心を、人は多分恋と呼ぶのだろう。



後書きを表示する
 履歴書内容からコメディと見せかけて実はシリアスかと思いきややっぱりコメディむしろギャグ。
 改めてHTMLにするとホントに短いので載せるのが躊躇われましたが、習作を習作のまま放っておくと自分の中から消え去りそうな気がしたので思い切って掲載を決定。こんなん書いたりしてますよということで……。タイトルの品詞が思い切り間違っております。語呂優先。
 この企画で学んだのは「人格が変わるキャラクターはメインには出来ない」ということと「手に余る条件を与えられた時、人は恋愛ものに逃げる」ということでした。

<07/03/24>
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